がまだせ!熊本地震後の熊本城 ‘16夏

熊本城は、今回で三度目である。
今回、佐賀の知り合いに会いに行くと決まった時、多少無理しても熊本へ行こうと思った。
それはやはり、この熊本城の被災状況を観ておきたいと思ったからだ。

別にヒューマニズムではなく。観光である。

平成28(2016)年4月14日及び16日、熊本地震は最大震度7を二度も観測した。
14日。NHKで被災の状況を見守ったが、ライトアップされた熊本城は、地震が起こると、埃なのか、白い煙を吹いていた。
朝になって被害の程度が判明し始めるが、16日の未明にも震度7が再来し、被害は大幅に増えた。

くしくも、熊本地震で行方不明になっていた最後の一人が8月11日に発見され、14日に不明だったその人と確定した。熊本の復興は、ここから始まるのだ。

現地に設置されていた熊本城の被害状況の掲示板(6月10日時点)によると、
◎14日
・重文建造物被害 10棟 
 →長塀の倒壊と、瓦、外壁の落下など
・復元建造物被害 9棟
 →天守閣瓦落下、壁のひび、塀の崩壊など
・石垣被害 崩落6箇所
 →膨らみ、緩み多数

◎16日
・重文建造物被害 13棟
 →倒壊2棟、一部倒壊3棟、屋根・壁破損など
・復元建造物被害 20棟
 →倒壊5棟、下部石垣倒壊、屋根・壁破損など
・石垣被害
 →崩落、膨らみ、緩み 517面(うち崩落50箇所229面)

石垣の被害箇所は全体の29.9%にも及び、その内10.3%は崩落した。
地盤の陥没や地割れは70箇所もあり、その他の施設も屋根・壁破損など26棟に被害が出た。


ロハスなスーパーホテルからは、嫁さんと行くには少し距離があったため、河原町から市電で熊本城・市役所前駅まで行った。
電車に乗っている途中、見え隠れする熊本城。ドキドキする。

電車を降りると、もう、すぐ長塀である。
熊本城のライトアップは6月に再開され、毎日、日没から23時まで行われている。

時刻は22時。
長塀のすぐ後ろ側にあるバス停に居る人々は長塀に見向きもしていない。そりゃそうだろう。地元の方には毎日の風景だ。
こちらといえば、とりあえず単純に立ち尽くした。

熊本城 長塀被災 坪井川 ライトアップ 2016夏

倒壊したのは、80mほどという。見た感じでは、全体の半分くらいだ。
倒壊部分には白いマットが掛けられている。
長塀は戦国末期に建築され、国の重要文化財指定である。
4月14日の最初の震度7で倒壊している。

熊本城 長塀被災 ライトアップ 2016夏

下の写真は、2011夏時点。白漆喰と板張りの美しい長塀が、平御櫓から馬具櫓まで続いていた。

熊本城 長塀 ライトアップ 2011夏

朝、もう一度、今度はひとりで歩いて来てみた。
夜も蒸し暑かったが、朝も蒸し暑い。熊本滞在の三日間は、見事に毎日37度、38度と凄まじい残暑に見舞われていた。

熊本城 長塀被災 2016夏

2011夏時点では、長塀の真下も歩くことができ、地元の方がジョギングやウォーキングをしていた。
2011年夏。これは東日本大震災直後といえる段階だが、それでもこの熊本城が2度も震度7に揺さぶられ、今のような姿になるなんて想像もできなかった。
のんきに寝転んで撮ったのだが、今は立入禁止となっている。

熊本城 長塀 2011夏

熊本城・市役所前駅から、坪井川沿いの長塀通りを歩き、行幸橋の傍らの広場には、この天下の名城を築いた男・加藤清正の像が設置されている。

こちらは無事だったようだ。
背後は長塀と馬具櫓だが、写真では解りにくいが、馬具櫓下の石垣が崩れている(後述)。

熊本城 加藤清正公像 2016夏 ライトアップ

こちらは2008年初夏の写真。
馬具櫓は、昭和41(1966)年、コンクリートブロック造(屋根は木造)で復元されていたが、老朽化と木造復元整備事業によって、平成21(2009)年2月に解体。最初の訪問直後だ。
熊本城 加藤清正公像 2008初夏

ちょっと判りにくいが、2011夏時点では、解体されたが未着工であり、石垣部分しかない。

熊本城 加藤清正公像 2011夏

その馬具櫓の石垣は、震災直後は崩れることもなかったが、2016年5月10日に突如崩落したという。
写真の真ん中左寄りの建物が馬具櫓。下に崩落した石垣がゴロゴロしている。

熊本城 馬具櫓下石垣崩落 ライトアップ 2016夏

木造復元が2014年に完成したばかりの美しい白漆喰にもひびが入っている。

熊本城 馬具櫓石垣被災 ライトアップ 2016夏

朝。石垣が崩落した部分は、やはり重量が均一にかからないため板張りから歪んでいるのが目で見て分かった。

熊本城 馬具櫓石垣被災 2016夏

このままではいずれ馬具櫓も耐え切れず崩壊してしまいかねない。
算木積だけで支えている現状。
それにしても、石垣の内部って小さい石が無数に詰められていたんだと目を見張った。

熊本城 馬具櫓下石垣崩落 2016夏

2008年初夏の馬具櫓。
この時は、まだ昭和の外観復元のものであった。

熊本城 馬具櫓 2008初夏

なお、特別史跡碑も周囲の石柵が崩れ、なんと4段積の碑の、一番下だけがそのままに、上三段は落ちることなく45度ほどその場で回転している。

熊本城 下馬橋跡 特別史跡碑被災 2016夏

2008年初夏の特別史跡碑。向きが変わっているのが解る。

熊本城 下馬橋跡 特別史跡碑 2008初夏

馬具櫓の裏方、櫨方(はぜかた)門は入場ゲートにもなっているが、無論立入禁止であり、備前堀越しに飯田丸五階櫓が眺められる行幸坂も立入禁止である。

熊本城 行幸坂 立入禁止

行幸橋のある道から少し引くと、天守を含め飯田丸五階櫓や馬具櫓、加藤清正公像が一望できる。

熊本城 花畑近辺から 2016夏

平成16(2004)年に木造復元された飯田丸五階櫓は、石垣崩落が著しく、二ヶ所をすでに算木積だけで支えている状況。写真は長塀から見え隠れする飯田丸五階櫓。

熊本城 飯田丸五階櫓被災 ライトアップ 2016夏

崩壊の緊急性が高いため、飯田丸でこしらえた鉄骨のアームを延ばし、それでグッと持ち上げるようにして倒壊防止をしている。

熊本城 飯田丸五階櫓被災 2016夏

その凄まじいまでの飯田丸五階櫓救助への執念がわかる。

熊本城 飯田丸五階櫓被災 2016夏

市役所の14階フロアから熊本城が一望できる。ここはおすすめだ。
熊本城が一望できる。

ただし、被災した方の住宅相談窓口に近いので、わいわい眺めるのはダメだ。8月14日も、多くの方が窓口の前の椅子に座り、順番を待っていた。

熊本城 市役所展望フロアから 飯田丸五階櫓倒壊防止アーム 2016夏

2011夏の飯田丸五階櫓。
ライトアップが美しい。背後は天守。堀は備前堀で、数少ない熊本城の水堀だ。
この場所は行幸坂なので、2016夏時点は通行禁止となっている。

熊本城 飯田丸五階櫓 ライトアップ 2011夏

こちらも2011年夏。
石垣が崩落したのは、こちら側でなく、お堀から右手に延びている石垣部分だ。

熊本城 飯田丸五階櫓 2011夏

同じく、行幸橋手前の交差点からの天守。

熊本城 天守被災 国際交流会館付近から 2016夏

花畑町の歩道橋からのライトアップ。
被災時の熊本城めぐりマップといったものが無く、ラーメン食べに行こうと歩道橋を渡っていたとき、たまたま良い場所を見付けた。暗がりだと被災状況がわかりにくい。

熊本城 花畑付近歩道橋から 天守被災ライトアップ 2016夏

長塀から西方面の櫨方門方面を見たあとは、反対側の東方面、須戸口門方面へ行ってみる。
下の写真は平御櫓(ひらおんやぐら)といい、須戸口門を守る櫓である。

馬具櫓同様、こちらは昭和36年度にコンクリートブロック造で外観復元されたものだが、大きな被害は無かった。

熊本城 平御櫓被災 2016夏

ただし、続いている塀の瓦は一部崩落していた。

熊本城 平御櫓被災 塀の瓦 2016夏

須戸口門も立入禁止になっているので、熊本城稲荷神社と熊本大神宮の横を歩いて、もう少し先にある、棒庵坂を目指す。ちなみに、車は北大手門の先の加藤神社までは通行可能で(行き止まりだから加藤神社で折り返すことになる)、徒歩なら二の丸広場経由で城彩苑まで行き、ぐるっと一周できるが、城彩苑の通行が18時までなので、行幸坂方面にある城彩苑から二の丸広場を目指した初日の夜は、そこまで辿り着けず涙を飲んだ(一人だったら迂回しようが遠回りしようが行ったろうが…負け惜しみ…)。

で、熊本城稲荷神社の鳥居はひびが入り、倒壊の危険があるが特に処置はない。
その先、熊本大神宮は悲惨で、高石垣にそびえていたはずの東十八間櫓が倒壊し、下敷きになる形で熊本大神宮も被害を受けた。

熊本城 東十八間櫓倒壊 2016夏

東十八間櫓に続いている北十八間櫓と、L字型の北十八間櫓に続く五間櫓も、同じく倒壊している。下の写真で少し残っているのは、五間櫓である。

熊本城 北十八間櫓・五間櫓倒壊 2016夏

東十八間櫓、北十八間櫓、五間櫓はどれも重要文化財の貴重な遺産であったが、見る影もなく石垣もろとも倒壊してしまった。

下の写真は2011年夏の北十八間櫓・五間櫓だ。
この辺り一帯は、石垣沿いに芝生の緑道になっていて、石垣沿いに歩くこともできるが、今は立入禁止となり、県道の歩道から眺めるばかりである。

熊本城 北十八間櫓・五間櫓 2011夏

KKRホテル熊本が見えたら、すぐ棒庵坂だ。
被災した小天守と大天守が見える。
大天守は、瓦も禿、鯱も無く、無残な姿になってしまっている。

熊本城 棒庵坂付近から小天守・天守被災 2016夏

KKRホテル熊本からの天守群の景色は素晴らしく、他のホテルより割高だったが、この景色(下の写真)を見るために2011夏は宿泊したのだった。

熊本城 KKRホテル熊本から天守ライトアップ 2011夏

棒庵坂の前には、崩落した石垣が、番号を振られ整然と置かれていた。
石は、東十八間櫓南の石垣で、特別史跡のため確実に元通りにしなくてはならないようだ。

熊本城 棒庵坂下 崩落石垣仮置き場 2016夏

熊本城の崩落した石垣からは色々なものが発見されているが、城彩苑には、人の顔が描かれた石垣が展示されている。
何百年も昔の人間の、人間味に触れるような感動がある。
なんとも、穏やかな顔である。

熊本城 人の顔が描かれた崩落石垣 城彩苑に展示 2016夏

棒庵坂を登ると、二の丸である。
平成15(2003)年に木造復元された戌亥櫓も、櫓台の石垣が崩落し、危機に瀕している。

熊本城 戌亥櫓被災 2016夏

こちらも極限状態で、一刻も早く救援が必要だ。

熊本城 戌亥櫓被災 一本足 2016夏

横から見るとずんぐりの戌亥櫓。正面から見るとほそっこい。飯田丸五階櫓に比べ重量が軽そうなのが良かったのか。。。

熊本城 戌亥櫓下石垣被災 2016夏

西出丸から頬当御門は立入禁止だが、二の丸広場から本丸方面を眺めることができる。
左の戌亥櫓は、見た感じ無事だが、角度を変えれば上の写真のように大ピンチである。

熊本城 二の丸広場から戌亥櫓と本丸方面 2016夏

出丸の石垣も塀も倒壊している。
二の丸広場も、西出丸方面の数メートルは立入ができないから、どうしても少し遠目のアングルでしか見ることができない。

熊本城 二の丸広場から天守方面 西出丸石垣被災 2016夏

下の写真は2011年夏。宇土櫓を筆頭に、天守、小天守がそびえている。勇壮で攻撃的な熊本城の真骨頂と言える風景。

熊本城 二の丸広場から天守方面 2011夏

棒庵坂、二の丸広場の間に北大手門跡の入口がある。
2016夏時点で、この先にある加藤神社への参拝が可能で、被災後の熊本城の最終目的地となるであろう。
北大手の枡形も、石垣の崩落危機によって土のうで崩壊防止をしている。

熊本城 北大手門跡石垣被災 2016夏

今こそ不屈の「清正公魂」
加藤神社は熊本城を築城した加藤清正を祀っている。
「せいしょこ」さま。そう呼ばれ、肥後の人々から愛されている。

熊本城 加藤神社被災 2016夏

Nの先祖は、肥後の豪族・菊池氏であるらしい。
遠い親戚を訪ねた2008年初夏。はじめて熊本城へ来た。
そのときは、親父と親父の姉(おばちゃん)の三人で来た。
おばちゃんは、Nが子供の頃から、なにかにつけ「せいしょこさま、せいしょこさま」といって、なんにも意味が解らなかったが、この、加藤清正のことだったのだ。

Nは勝手に、自分の背後霊が、加藤清正なんじゃないかと、ほんとに勝手に幼少期に感じていた。
多分、おばちゃんの「せいしょこさま」が伝染った勘違いだろうが、それにしても、Nにとってこの熊本とは、特別な土地なのである。

その熊本が震災被害に遭った。今回、たまたま来れることになって、大きな被害を受けた熊本城と阿蘇神社に行くことができた。町を歩いてみて、まだまだ傷痕が多いことも感じた。

最初の訪問で、一番印象に残ったのが、この宇土櫓と高石垣、空堀と天守群だ。
宇土櫓は大きな被害を免れたとはいえ、続櫓は倒壊した。

熊本城 宇土櫓 天守群被災 2016夏

壁、屋根にも破損がみられるが、現存建造物で一番価値の高いであろう宇土櫓が残ったのは、不幸中の幸いと言える。

熊本城 宇土櫓被災 ひび 2016夏

熊本城は、元来は立ち入り規制の基準が緩いのか、色々な所まで入りこめた。宇土櫓の下の空堀にも降りることができ、そこから見上げる宇土櫓は、立ちくらみのするような高さが迫力満点だった。

熊本城 宇土櫓 空堀から見上げる 2008初夏

再訪時の2011夏。
念願のライトアップも撮影できた。続櫓もまだしっかり残っている。

熊本城 宇土櫓ライトアップ 2011夏

飯田丸五階櫓の件でふれたが、市役所の展望ロビーからの熊本城は必見だ。
天守はよく見える。被災状況もよく見える。とにかく絶景といえる。

熊本城 市役所展望フロアから天守被災 2016夏

夜は閉庁の日でも22時まで。朝は平日8:30~、休日など閉庁日は10:00~。無料だ。
繰り返しになるが、被災住宅の臨時相談窓口が設置されているので、常識的に観光しよう。

熊本城 市役所展望フロアからの眺望 2016夏

熊本城、この夏の太陽のように、熱く篤く、火の国に蘇えれ!
俺は何度でもここに来るぞ!そのたびに見せてくれ。復興していく姿を!
そして、さらに強く!強く強く!
がまだせ!熊本!!


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